『翻訳』ビル・エヴァンス インタビュー 1970

ビル・エヴァンス(ピアニスト) インタビュー 1970 (一部カットしてます)

― あなたのトリオは、そのバランス感覚と複雑なリズムでとても有名ですが、これはかなりの努力が必要なのでしょうか?どの程度意識的にやっているのですか?

ビル:
それほど意識しているわけじゃないんです。それよりも、関わっているミュージシャンの質が大きいと思いますね。
僕たちには共通の“望み”があるんです。僕たちが求めているのは、責任ある自由。
つまり「このタイミングでこうしなきゃいけない」という義務はないけれど、全体の演奏に対しては責任を持ちたい。
もちろん、それには特別なミュージシャンが必要なんです。
伴奏とソロ、それぞれの役割においても、“サイドマン”と呼ばれる人たちも、実のところ“サイド”ではない。
僕たちはただの「トリオ」なんです。

― 同じメンバーで長くやっているのですか?とても密な協力が必要ですよね。

ビル:
たとえばですが、このトリオは一度もリハーサルをしたことがないんです。
リハーサルで何かを得ることもできるかもしれないけど、
僕たちがやってきたことは全部、実際の演奏の中から自然に育ってきたものなんです。

最初の質問はなんでしたっけ?

― こういった関係性を作るのに長い時間がかかるのかということでした。

ビル:
そうですね、実際にはそれほど時間はかかりません。
誰かがバンドに加わるとき、すぐに「この人はフィットする」と感じることが多いです。
エディ・ゴメス(ベーシスト)は最初、すごくプレッシャーを感じていたって言ってましたけど、
シカゴのロンドン・ハウスで演奏したとき、僕にはまるで水が自然に流れるように聴こえたんですよ。
その後は、共通の「もっと音楽的にしたい」という想いの中で、
自然に発展していったと思います。

― あなたは“知的な演奏家”というイメージを持たれていますが、実際どうですか?

ビル:
僕はただの“学ぶ者(学生)”でしかないですよ。
ジャズは知的な操作で演奏できるものじゃないんです。
知性を使うのは、素材を分解したり理解したりするためで、
実際に演奏するには、何年も何年もプレイし続けて、技術を体に染み込ませることが必要なんです。
その上で、知的なことを忘れてリラックスして演奏できるようになる。

― あなたの演奏はとても無駄がないと言われますね。

ビル:
それは好みの問題だと思います。
僕は自分自身のために演奏しているんです。
つまり、自分自身が最初の聴き手なんですね。

僕は「余計な装飾」が好きじゃないんです。
できるだけ明快に、簡潔に、物事を伝えたい。
わざわざ難しく言う必要がないなら、簡単に言えばいいと思うんです。

― 演奏を始めるとき、どれくらい「何が起きるか」分かっているんですか?

ビル:
基本的には、和声的な構造だけを決めておくんです。
あとは、繰り返し演奏していく中で自然と“アレンジ”のような形になってくることもありますが、
それを壊して、新鮮さを保つこともよくあります。

テーマを演奏した後は、何が起きるかは全く分かりません。
スタイルは分かっていても、どういうアイデアが出てくるか、どう絡むかはその場次第なんです。

― あなたにとって新しい曲を書く上での“挑戦”とは?

ビル:
メロディを通して何かを伝えることですね。
誰かに何かを見せたり、自分自身に気づきを与えたり。
それが誰かの人生を少しでも豊かにしたり、気持ちをよくすることにつながるなら、
それが僕にとっての一番大きな動機です。

エディについても言いたいんですが、
彼は驚くほど柔軟性があるんです。

朝テレビでイスラエルの民謡グループを見て、
ベースを弾いているのがエディだったりして(笑)、
まるで彼がイスラエル生まれかのように自然に演奏しているんですよ。

あるときは完全にフリーな演奏をしていたり、
でも僕と演奏するときは、まるでそれしかできないかのように完璧に合わせてくる。
でも実際は全然違ってて、ものすごく幅が広いんです。

― (エディ・ゴメスは)どこでベースを学んだんですか?

エディ:
13〜14年くらい弾いてます。高校でも弾いてましたし、
その後ジュリアードでクラシックベースを学びました。

― (マーティー・モレルは)シンフォニーオーケストラでドラムも叩いてたんですよね?

マーティー(ドラマー):
そうです、大学に通ってるときに少しやってました。

― なぜクラシックを離れたんですか?

ビル:
ある日、彼はひたすら小節を数えていてね……(笑)

マーティ:
そう、それでね、自分を全く表現できないことに気づいたんです。ただ譜面を読むだけで終わってしまう。
「自己表現の余地」なんてまったくなかった――でも今は、その“自己表現の空間”がついに開かれたんです。

― クラシックの要素をジャズに取り入れることはありますか?

ビル:
もし合えば、取り入れると思います。

― 好きなクラシック作曲家は?

ビル:
一人挙げるなら…バッハですね。
たぶんジャズミュージシャンに人気なんじゃないかな。
他にもたくさん好きですよ。
ハイドン、モーツァルト、ドビュッシー、ラヴェル、バルトーク…いろいろです。

2025年03月25日 | Posted in インタビュー翻訳 | | Comments Closed 

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