『翻訳』ハービー・ハンコック「マイルス・デイヴィス・クインテットで演奏すること」

『翻訳』 ハービー・ハンコック インタビュー:「マイルス・デイヴィス・クインテットで演奏すること」– 『Possibilities』(2005年)より

僕がマイルスのバンドに入ったのは23歳のときで、
28歳で抜けました。

つまり、20代のほとんどをマイルス・デイヴィスと一緒に演奏して過ごしたんです。

マイルスと出会ったとき、
彼が言ったこと、彼が信じていたことの中に、
僕の音楽や人生に深く影響を与えたものがいくつもありました。

彼からは「自分が信じることを貫く」という姿勢を学びました。

そしてマイルスからは「聴くこと」についても多くを学びました。

音楽的に何が起きても、
それを価値あるものに変えること。
他人が演奏していることをジャッジ(評価)するのではなく、
そこにあるものを受け取って、
そこから何かを生み出す。

それが、僕たちがやろうとしていたことなんです。

マイルスはこう言いました。
「俺はお前たちに、観客の前で“練習する”ために金を払ってるんだ」って。

部屋で練習するのはもちろん大事だけど、
そのままをステージに持ち込むな、と。

それはジャズじゃない、と。

ジャズっていうのは“今この瞬間”に生まれるものなんだ。
演奏される“その瞬間”に意味がある。

そして、それは簡単なことじゃない。
勇気がいるし、
信頼も必要だし、
そして“裸になる”ような感覚も必要なんだ。

少なくとも、それに近づこうとする姿勢が必要なんだ。

でもマイルスは、僕たち若いバンドメンバー全員に
その信念を試す“場”を与えてくれた。

快適なゾーンから抜け出して、
自分たちが知っていることの外側へ踏み出すような…

音楽的にも知的にも、
結果がどうなるかわからないような「暗い部屋」に入って、
そこから何かを生み出すんです。

2025年03月23日 | Posted in インタビュー翻訳 | | Comments Closed 

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